5万4千円でアジア大横断・・・という本2007年05月14日 22時00分43秒

下川裕治

このタイトルで下川裕治の著書とわかる方は何人もいると思います。
東京・日本橋からトルコまで、バスを乗り継いでアジア・ハイウェーを行こうと企画が一冊の文庫本(新潮文庫)になったものです。

第一部が日本から韓国、北朝鮮をパスして中国からタイ・バンコクまで。
第二部がバングラデシュからインド、パキスタン、イランを抜けてトルコでゴール。

北朝鮮、アフガニスタン、ミャンマーは政情が不安定であり通行をあきらめ、それ以外はできるだけアジア・ハイウェーを可能な限り忠実にトレースしていくのがルール。
結果として27日中、車中15泊という強行軍でたどり着きます。
その交通費が5万4千円ということ。

ご存じの方も多いですが下川氏は「12万円で世界を歩く」(1990年・朝日新聞社)で旅行作家としてデビュー、バブル全盛時代に12万円ポッキリで日本から海外へ行き日本に戻ってくるというストイックなほどのビンボー旅行で有名になりました。

そして今回の本、下川氏はあいかわらずビンボー旅行のスタイルというか一昔前の旅のスタイルを変えないというか・・・出版社側が氏にそういう仕事を依頼するから変えないのか、氏が変わらないからなのかは私にはわかりません。

ちょくちょく下川氏の本を時間つぶしに読むのですが、旅の企画そのものは面白いのだけど、下川氏の文体は好きではありません。

一つは、アジアが発展して便利になっていく事に反比例するように、昔の旅が懐かしいという記述がくどいぐらいに多いこと。

今回でも「中国で高速道路が続々と建設されてバスが高速で故障なく走っている。昔は中国のバスの旅は切符もなかなか取れない上に、狭い車内に押し込められて故障したりして何時着くかわからない旅だった。」
というような過去を懐かしむ記述ばかり読まされると、「じゃ、今の便利になった旅はだめなの?」と言いたくなります。

そりゃ私も昔、中国で列車の切符を買うのに一日がかりだった経験はいくらでもあります。
そして、今回の旅で一回路上でバスが故障すると「中国のバスの旅はこうでなくては。」という記述があります。読んでいる方は「そんなに昔の旅が良いんですか?」と言いたくなります。

もう一つは、私はビンボー旅行のスタイルから変えられないんです・・・という旅。
「12万円・・・」の頃は、それが「売り」だし新鮮でした。
今になっても、そのスタイルなので、読まされている方が自虐的になってしまいます。

「そんなのわかっているなら読まなくてもいいじゃないか。」とのご指摘ごもっとも(^^;;

昔、NHKの「痛快!バックパッカー」のTV番組でご一緒させてもらった縁もあるし、旅の企画が面白そうだからついつい買ってしまう、そんな本です。