コダック社破産についての備忘録2012年01月20日 22時22分38秒

この2週間、私のところにはコダック社破産とNikonD4の発売の案内のメールやメールマガジンが何通も届いています。
今日はコダック社の倒産について備忘録として書いておきます。

1月上旬、米イーストマン・コダック社破産の可能性があるとニュースで流れ、昨日、同社は連邦地裁に米連邦破産申請(日本の民事再生法に相当)をおこないました。
「来るべき時が来たか」というのが正直な感想です。

以前ブログにも書いたことがありますが、写真を始めた時からコダックのフイルムは憧れでした。社会人になってからはコダックのフイルムを中心に使っていました。
ピーク時(2000年頃)だと年間100本以上のエクタクロームE100S、E100VS(ポジ・フイルム)やトライX(モノクロ・フイルム)を使って撮影していました。
特にポジ・フイルムの発色は、フジ(富士フイルム社)は鮮やかでメリハリのある発色で、コダックはやや暖色系にシフトした落ち着いた発色です。
私はこの落ち着いた発色が好みでコダックを使い続けていました。
また、コダクロームの油絵具を塗ったような濃厚な発色は、フジやコニカ(コニカミノルタ社)には無いものでした。
その私も昨年のフイルムでの撮影はポジ1本とモノクロ1本とわずか2本だけでした。

ポジ・チェック

海外での撮影は2007年のマレー半島縦断がフイルム一眼のみでの撮影でした。
2008年はフイルム一眼とデジタル一眼の併用でしたが、2009年からは完全にデジタル一眼にシフトしました。
私の周りでもフイルムカメラだけで撮影している人は誰と誰と数えることができるほどです。
プロ写真家もフイルムカメラで仕事をしている方はごく少数です。
おそらく大判カメラかライカで仕事をするような写真家が中心だと思います。
フィルムでの撮影は、LPレコードで音楽を聴くと同じくらい趣味の世界となってしまいました。
そのような時代にフイルム専業メーカーが生き残ることは大変難しいことです。

フイルム・メーカーの倒産や事業撤退はすでに数年前から始まっていました。
2004年にはコダック、フジと並んでフィルム3大メーカーのドイツのアグファ・ゲバルト社がフイルム事業撤退しました。アグファ・フォトに事業移管しましたが、そのアグファ・フォトも2005年に破産しました。ここのフィルムの発色は独特でファンが多いフイルムでした。私もよく使いました。
最後は買占め騒動まで起こり、私もアグファ・ウルトラやアグファ・クロームを買えるだけ買いました。
今はLupus Imaging Mediaとして再編されて他社からのフイルムの供給を受けて販売していますが、日本で販売されているのを見たことがありません。

コニカもミノルタと合併して、2006年にフイルム事業から撤退し、DNPフォトルシオ(大日本印刷のグループ企業)に業務譲渡(中身はコダックのOEM)をしましたが、そのDNPもわずか2年たらずでフイルム事業から撤退しました。
またインスタントカメラのポラロイド社の倒産もありました。
ハンガリーのフォルテ社も撤退しました。
いずれもデジタルカメラ(含む携帯電話、スマートフォン)の普及により撤退を余儀なくされたものです。

コダック社は110の特許を持っていることもあり、すでにいくつかの企業が買収に名乗りをあげていますので再生はすると思いますが、コニカやアグファと同様、フイルムの発売が無くなる可能性があります。
あの黄色パッケージが無くなると寂しいですね。

日本で買えることができるのはイギリスのイルフォードとフジぐらいになるのでしょうか。
富士フィルムは「フイルムメーカーの使命としてフィルム事業からは撤退しない」と明言しています。
写真屋のフィルムコーナーは緑のパッケージだけになる日も近いのかもしれません。