ノンフィクション2冊 ― 2009年07月20日 18時23分30秒

最初は「伊号潜水艦訪欧記」-ヨーロッパへの苦難の航海-
第二次世界大戦中に日本から同盟国ドイツに派遣された伊号潜水艦の記録です。
なぜ、この本を買ったのかというと、高槻駅前の本屋で「旅の本」という文庫の特集コーナーを設けていました。蔵前仁一や下川裕治から深夜特急などおなじみの旅本が積んでありました、ただそのコーナーの左のほうを見ると店員さんが好みで選んだのかマイナーな本が積んでありました。
その中に一冊がこの本です。
店員さんのセンスにちょっと感心しました。
出版社は光人社、編集は伊呂波会。
光人社は第二次世界大戦の戦記を出している出版社で、いままでこの手の本は買ったことはありませんでした。
伊呂波会とは対戦中の日本海軍潜水艦の搭乗員の校友会です。
大戦中の同盟国ドイツとの物資や技術のやりとりなど商船などは連合国に拿捕されたり撃沈されたりして、唯一残された手段は潜水艦だけでした。
伊号というのは日本で最大排水量を誇る潜水艦でした。
日本から大戦中5回伊号がドイツに派遣されましたが往復成功したのは唯一伊8号のみでした。それ以外は往復のどちらかで攻撃や事故で撃沈されてしまいました。
護衛の戦艦も戦闘機もなく単独行であり連合軍に見つかると、それは死に直結でした。第1部はその派遣の記録です。
第2部では、伊8号でドイツに渡った技術者の方の航海記とドイツ滞在記で、最後は敗戦直前のドイツからフィンランドへの脱出までの記録です。
航海は日本からシンガポール、そしてインド洋からアフリカ南端の喜望峰を回りドイツまで向かうという、旅というよりあまりにも過酷な航海でした。
航海記は日記スタイルで詳細な記述が書いてあるのですが文体のせいか敵の攻撃を受けたときの記述も淡々と書かれています。一方、ドイツ滞在記は大戦末期のベルリン事情が人間臭く詳しく書かれています。
読んでいくうちにこの時代に生きた人たちの死生観というのは、今の私たちよりはるかに「死」が近かったことがわかります。日記の中で昨日まで同じ部隊にいて別の潜水艦に乗った戦友の死とか、淡々と記されています。
航海記は日記スタイルで詳細な記述がの滞在記
第二次世界大戦のドイツへの潜水艦航海記として秀逸だと思いますが、「旅」の本として読むにはちょっと辛いかな。
でも歴史を知る上には良い本です。
次は「下山事件(シモヤマ・ケース)」(森達也著 新潮文庫)
下山事件とは1949年戦後の混乱がまだ続いていた時代、初代国鉄総裁の下山定則が常磐線五反野駅で礫死体として発見された事件である。この後、三鷹事件、松川事件と国鉄をめぐる謎の事件が続くこととなる。
下山事件は過去に松本清張の小説は当時取材した記者によって書かれ、他殺説、自殺説、共産党員犯人説、GHQ犯人説などなど、いまだ多くの謎につつまれています。
著者の森氏は、1990年代終わりに松川事件の関係者の子孫と知り合い下山事件の謎に引き込まれていきます。
事件発生から50年経ち関係者の多くが鬼籍に入り、過去の記録の見直しや生存者へのインタビューと続いていきます。
取材過程は面白いのですが滝氏が映像ディレクターということもあり、テレビ的な話の展開になっていき、先に出た話が途中で再録されていたり、章の途中でいきなり過去の話から今の話になるので展開についていけなくなってしまうので読んでいるほうが戸惑ってしまいます。
その滝氏もこの事件のTV番組で特番予定が中止になり、その後の週刊誌連載など途中で共同取材した記者が書いてしまうなど、最初の情報提供者がじれて自身で「下山事件」を書いてしまうという、滝氏の意図していないことが起こります。森氏の生き方考え方はわかるのですが、事件への取材が途切れたり、話がそれたりしてしまいます。
戦後の混乱期の事件の描写とか結論を導いていく過程は上手いのですが、一冊のノンフィクションとしては散漫になったきらいがあります。
面白い素材だけにちょっと残念です。
たまたまですが1940年代の日本で起こったノンフィクション2冊。
知っているようで知らない日本の歴史です。
第二次世界大戦中に日本から同盟国ドイツに派遣された伊号潜水艦の記録です。
なぜ、この本を買ったのかというと、高槻駅前の本屋で「旅の本」という文庫の特集コーナーを設けていました。蔵前仁一や下川裕治から深夜特急などおなじみの旅本が積んでありました、ただそのコーナーの左のほうを見ると店員さんが好みで選んだのかマイナーな本が積んでありました。
その中に一冊がこの本です。
店員さんのセンスにちょっと感心しました。
出版社は光人社、編集は伊呂波会。
光人社は第二次世界大戦の戦記を出している出版社で、いままでこの手の本は買ったことはありませんでした。
伊呂波会とは対戦中の日本海軍潜水艦の搭乗員の校友会です。
大戦中の同盟国ドイツとの物資や技術のやりとりなど商船などは連合国に拿捕されたり撃沈されたりして、唯一残された手段は潜水艦だけでした。
伊号というのは日本で最大排水量を誇る潜水艦でした。
日本から大戦中5回伊号がドイツに派遣されましたが往復成功したのは唯一伊8号のみでした。それ以外は往復のどちらかで攻撃や事故で撃沈されてしまいました。
護衛の戦艦も戦闘機もなく単独行であり連合軍に見つかると、それは死に直結でした。第1部はその派遣の記録です。
第2部では、伊8号でドイツに渡った技術者の方の航海記とドイツ滞在記で、最後は敗戦直前のドイツからフィンランドへの脱出までの記録です。
航海は日本からシンガポール、そしてインド洋からアフリカ南端の喜望峰を回りドイツまで向かうという、旅というよりあまりにも過酷な航海でした。
航海記は日記スタイルで詳細な記述が書いてあるのですが文体のせいか敵の攻撃を受けたときの記述も淡々と書かれています。一方、ドイツ滞在記は大戦末期のベルリン事情が人間臭く詳しく書かれています。
読んでいくうちにこの時代に生きた人たちの死生観というのは、今の私たちよりはるかに「死」が近かったことがわかります。日記の中で昨日まで同じ部隊にいて別の潜水艦に乗った戦友の死とか、淡々と記されています。
航海記は日記スタイルで詳細な記述がの滞在記
第二次世界大戦のドイツへの潜水艦航海記として秀逸だと思いますが、「旅」の本として読むにはちょっと辛いかな。
でも歴史を知る上には良い本です。
次は「下山事件(シモヤマ・ケース)」(森達也著 新潮文庫)
下山事件とは1949年戦後の混乱がまだ続いていた時代、初代国鉄総裁の下山定則が常磐線五反野駅で礫死体として発見された事件である。この後、三鷹事件、松川事件と国鉄をめぐる謎の事件が続くこととなる。
下山事件は過去に松本清張の小説は当時取材した記者によって書かれ、他殺説、自殺説、共産党員犯人説、GHQ犯人説などなど、いまだ多くの謎につつまれています。
著者の森氏は、1990年代終わりに松川事件の関係者の子孫と知り合い下山事件の謎に引き込まれていきます。
事件発生から50年経ち関係者の多くが鬼籍に入り、過去の記録の見直しや生存者へのインタビューと続いていきます。
取材過程は面白いのですが滝氏が映像ディレクターということもあり、テレビ的な話の展開になっていき、先に出た話が途中で再録されていたり、章の途中でいきなり過去の話から今の話になるので展開についていけなくなってしまうので読んでいるほうが戸惑ってしまいます。
その滝氏もこの事件のTV番組で特番予定が中止になり、その後の週刊誌連載など途中で共同取材した記者が書いてしまうなど、最初の情報提供者がじれて自身で「下山事件」を書いてしまうという、滝氏の意図していないことが起こります。森氏の生き方考え方はわかるのですが、事件への取材が途切れたり、話がそれたりしてしまいます。
戦後の混乱期の事件の描写とか結論を導いていく過程は上手いのですが、一冊のノンフィクションとしては散漫になったきらいがあります。
面白い素材だけにちょっと残念です。
たまたまですが1940年代の日本で起こったノンフィクション2冊。
知っているようで知らない日本の歴史です。
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