私の撮影スタイルに一番影響を与えた写真集2007年01月06日 16時00分47秒

篠山紀信 シルクロード

この冬休み、何処へも行かなかったので家で音楽を聞きながら本を読んでいる時間が多かったです。その中で、今の私の撮影スタイルの原点にあたる写真集もひさびさに読み返していました。

以前に書いたことがありますが、私が一番最初に写真の凄さを感じたのは沢田教一の「安全への逃避」でした。
そして多くの戦場カメラマンの写真を見て凄さとを憧れを感じましたが、そのスタイルを自分のモノにすることはできませんでした。
そして大学生の頃は、実質写真から離れていました。
人からは「ogawaさん、写真上手いですね。」と言ってもらえましたが、基本の構図の取り方やボケとシャッター速度の関係を知っているから無難な写真を撮ることはできました。
通信社や新聞社の採用試験の最終実技で落ちたのも、今にして思えば何が足らなかったの理解できます。

その写真集は「シルクロード」、撮影は篠山紀信。
奥付を見ると昭和58年(1983年)1・2巻は9月25日、3巻は10月25日となっています。このシルクロードの写真集、私が持っているのは全3巻の文庫本ですが、親本はその2年前に全8巻で大判サイズで刊行されていました。
当時は、その親本の存在を知りませんでした。

ちょうど就職した年の秋の終わり頃、アポの時間が早かったので時間つぶしのためクライアントの近くの本屋に入り偶然見つけて買ったのでした。
ほとんどの本の買った時のシチュエーションなんて忘れていますが、なぜかこの本を買った時のことはよく覚えています。

当時の篠山紀信のイメージは「激写」というアイドルかヌード写真のイメージしかなくて、シルクロードというのが意外でした。
だが、それは私が知らなかっただけで「女形・玉三郎」「家」なども発表していました。

仕事を片づけ会社に定時連絡を入れ(ケータイなんぞ無い良い時代でした。)喫茶店でサボりついでに1巻を読み始めました。

写真を撮った時の説明を含む旅行記と写真の組み合わせです。
奈良からバチカンまで数年に渡って撮影されています。アフガニスタンは1979年以前の撮影でしょう。
当然、超多忙なカメラマンなので、現地コーディネーターや多数のアシスタントを使って効率良く撮り、何度も日本と各国を往復して撮影したのでしょう。

奈良、壱岐、対馬、韓国から中国、最後はバチカンと東から西へと構成されています。
写真の中には水平がずれている、ピンボケ、ブレ、露出不足など普通であれば失敗と言われる写真もあります。
「篠山紀信とあろう人が、こんな写真まで載せるのか?」という疑問がわきました。
そして読み(見)続けていくうちに不思議なことに「土地の空気感」が感じられるようになってきました。
一枚だけの写真で表現するのではなく複数の写真で表現していく、そしてプロとして「見せる写真とはこうだ!」というお手本をつきつけられました。

その時まで「人に見せるのが前提」という考えや「空気感を切り取る」発想はありませんでした。この事は、ただキレイに撮っていただけの私にとってショックでした。
「こんな写真を撮れるようになりたい。」と心底思いました。
それ以降、意識して撮影スタイルを変えました。

サイトにアップしている写真の殆どがこれ以降に撮った写真で、唯一例外が海外旅行記の「古き旅の記憶・・・中国1984年」です。
この写真集を見なければ、今の撮影スタイルは無かったでしょう。
以来、20年以上さまざまの国への旅と写真の枚数を重ねてきましたが、あの写真集に追いついたのか今でも自問自答です。

残念ながらシルクロード写真集は絶版です。
親本が欲しいのですが、古本の相場で美本はコレクターズアイテム価格になっていてクラクラするような値段になっています。並だと一冊3,500円前後で出ていますが、全8巻揃いは殆どみかけません。
一度だけ親本を全巻通して見たのですが文庫とは比較にならない描写力であり空気感でした。う~ん欲しいぞ。
文庫はネットで1巻送料込みで350円前後で取引されています。

さて、今年はどんな写真が撮れるでしょう。