雑誌休刊続く2009年12月15日 21時50分19秒

昨年秋、ラピタやプレイボーイ日本語版などの雑誌休刊のことを書きましたが、最近のニュースでも雑誌が売れなくて休刊の記事がありました。

BRIO、Hanako West、食彩浪漫などバブルの名残のような雑誌もとうとう休刊です。
DAYS JAPANも休刊の危機にあると聞いています。

ほんと売れないんだなぁ、寂しいなぁ。

で、雑誌休刊の告知サイトがあるんです。
http://www.fujisan.co.jp/Partner/PartnerSuspensionInfo.asp

上記の雑誌以外にも
専門雑誌からアダルト雑誌まで、よくぞこれだけ出てそして休刊しているいるものだとちょっと驚き。

看護師の口腔ケア<DVD付>なんて、いかにもアダルト系とおもいきやオーラルケアの専門書だったり、別の意味で面白いです。

でも、ほんとに雑誌が売れない時代なんだ・・・雑誌好きとしてはちょっと寂しいですね。

年明け会社が倒産して休刊になった「男の隠れ家」が会社が変わって復刊したのが救いかな。

「地球の歩き方」の歩き方、という本2009年11月29日 16時32分21秒


「地球の歩き方」の歩き方

「地球の歩き方」の歩き方(山口さやか・山口誠 共著 新潮社)という本が出版された。
これは「地球の歩き方」創刊30周年を記念して創刊当時のメンバー4氏(安松清、西川敏晴、藤田昭雄、後藤勇)と関係者に100時間以上のインタビューをもとに書かれた、「地球の歩き方」のクロニクルである。

私が「地球の歩き方」とうガイドブックを知ったのは1984年の中国である。一緒に行ったメンバーの一人が持っていて、私の持っていたガイドブックよりはるかに旅の目的に合っていた。そして、その中国旅行で使ったツアーがDST(ダイヤモンド・スチューデント・ツアー)であった。
以来25年、海外旅行には必ずこのガイドブックを持っていってる。

長年、使ってきた疑問など関係者のインタビューで明らかになっていく過程は読んでいてとても面白い。
それと過剰な感情移入や自慢話などがなく、どちらかといえば淡々と書かれているので、地球の歩き方の30年の変遷がとてもよくわかる構成となっている。
地球の歩き方の創刊は1979年、この時、「ヨーロッパ編」と「アメリカ編」の2冊が発売された。
創刊までの経緯が、ちょっと驚く。

1972年、空前の好景気の中ダイヤモンド社の就職事業として企業内定学生を他企業にいかないようにするために海外研修旅行をおこなっていた。その研修をJTB(当時は日本交通公社)と連携して
当時としては割安で、イギリスで語学研修を実施していた。また学生が卒業後ローンで払えるよう三菱銀行と提携して便宜を図っていた。
今の時代と違って、経費も格段に高かったしパスポート取るノウハウも個人は知らなかった時代である。
それがダイヤモンド・スチューデント友の会・・・つまりDSTの前身である。
1973年、安松氏が配属され、氏はヨーロッパの長期旅の経験から「自由旅行」の企画を思いつく。
当時は海外に行く人は少数だったので語学研修に行くフライトの空いている席に研修と同じ日程でフライトと到着日のオリエンテーションと帰国前日のために宿を1泊ずつセットしたツアーをつくりだした。
つまり安松氏と一緒にロンドンへ飛び、自由旅行の学生達に着いた日に現地でオリエンテーションを行い、30日後に同じホテルに戻ってきて確認して一緒に帰国するという形式。当時、自由旅行に対応した日本語のガイドブックなど無い時代だったので、そういうオリエンテーションが必要であった。

これが私も中国旅行で利用したDSTのフライトと到着前後のホテルが付いているツアーの原形はこれだったのか、今になって納得したのである。
そして、その参加者の感想をまとめた小冊子を次のツアーの説明会などで使った、これが地球の歩き方の原点である。
それを安松氏がヨーロッパ編、西川氏がアメリカ編を担当して1979年に「地球の歩き方」が創刊された。
なぜ黄色い表紙、青い小口、そして顔なしの表紙デザインになったのかがすべて明らかになっていく。
また新しい国のガイドブックの制作方法や改訂版の作成の背景も記述されている。

1980年代からバブル時代まで続いた空前の卒業旅行ブームを背景に刊行点数を増やし、湾岸戦争、9.11からSARSから猿岩石まで、時代に合わせての変化、利用者の変化による編集方針の変化など「なるほど、こういう理由で変わったのか。」と頷ける。
1990年頃に発生し当時明治大の教授、栗本慎一郎や大手雑誌による「地球の歩き方バッシング」や、外務省から在外日本大使館にくるトラブルで地球の歩き方を持っている若者が非常に多いというクレームにいかに対応していったのか。
なぜ過保護なくらいの情報量を掲載しているのか、今まで「地球の歩き方」に対して感じていた疑問が解けていく。

地球の歩き方の30年は、日本人の海外旅行スタイルの形を決めたというか、それに合わせて変化してきた30年と言える。
それを認識させてくれる本である。

後半にこのような記述がある。
”「地球の歩き方」や「AB-ROAD」が広まった80年代半ばに20代だった世代には、元気な人が多くて、その人たちはずっとコアな海外旅行の愛好家で、今も私達の良き読者が多いです。。40代後半から50代になった彼らは、いまでも根強いファンとして私達を支え、また個人旅行を引っ張ってくれる重要な層です。”
・・・これって、私もその一人やん。

「地球の歩き方」の歩き方

写真はこの夏利用したポルトガル編と右は1989年、韓国で発売されていた「地球の歩き方・日本編」。
韓国版を見ていると当時の編集や紙質やレイアウトを思い出せてくれる。
今は表紙にコピーなくなったけど、以前は表紙にコピーがあったことを覚えてます?
旅に出たくなるコピーや、その国のイメージを表している数行のコピー。

例えばヨーロッパ編

ヨーロッパを1ヶ月以上の期間
1日3,000円以内で
ホテルなどの予約なしで
鉄道を使って
旅する人のための徹底ガイド

この本の作り手のコンセプトが明快に出てます。

若者が海外を旅行しなくなった時代、次はどのような方向に向かうのか、私はもうしばらく「地球の歩き方」と付き合いましょうか。

「書ける人」と「書けない人」2009年10月23日 22時14分30秒

有川浩(ありかわ ひろ)の「ストーリー・セラー」という中篇の小説を読みました。
たまたま買った文庫の中の一編で収録されていた作品です。
有川浩といえば「図書館戦争」シリーズ、「阪急電車」などは読まれたかたも多いかと思います。
娘が好きで持っているので何冊か読みましたが、上手い書き手であるけど私の好みではないというのが正直なところです。

この小説は彼女の得意な男女の物語です。
男が、彼女がオフィスに忘れていったUSBメモリーの中にあった彼女の書いた小説を読んで、物語が始まります。

その話を、通勤電車の中で読んでいて、ズキッときてしまいました。

男が彼女に言った言葉の一部です。
「世の中には書ける人と書けない人がいるって。どれだけ本が好きでも書けない人は絶対書けないし、書ける人は『生まれて初めて書きました』って一作でも作家になれるくらい書けちゃうもんなんだって。」

う~ん、まったく同感。

ホームページで旅行記書いているけど、私自身が「書けている」とは思ったことないし、常に写真の添え書きかなと感じています。
同じところに行って上手い旅行記を書く人には感心していましたし。

でも、私はたしかに「書ける人」ではないけど「撮れる人」であるかなとは思っています。
写真の基礎は中学生の時に覚えただけで、それ以降は独学ですが、私の写真を好きだと言ってくださる方がいらっしゃるので、やはりそれは嬉しいことです。
この小説を読みながら、それを考えていました。

ちなみにこの小説、切ない結末ですけど、ちょっと有川浩が好きになりました。

地球家族2009年09月13日 17時05分39秒

地球家族
昨日、「地球家族 -世界30カ国のふつうの暮らし-」(1994年TOTO出版)という写真集を買いました。
この写真集は1994年、国際家族年の年に国連、世界銀行の後援で行われたプロジェクトです。
世界30カ国で統計上「中流」と言われる家族を選び出して、「申し訳ありませんが、家の中の物を全部、家に前に出して写真を撮らせて下さい。」ということで一つの家族と家財を全部並べて写真を撮った見開きのカットと家族の名前と家財リスト、次のページは撮影状況やその家族の日常をスナップした写真で構成されています。
つまり一つの国で4Pとなっています。

住んでいる家をバックに家財を庭や道路に出して家族写真。
財力と趣味などが一発でわかります。
一週間ほど撮影チームがその家族と一緒に生活し撮影するパターンです。
高層住宅に住むイスラエルの家族は車を含む家財と自分達が鉄板に乗りクレーンで吊るしての撮影など、労作です。

この写真集、発売された当時、本屋で見たのですが買いそびれてしまい、その後も買えずじまいで、昨日、ジュンク堂で見つけたときは驚き、即買いました。。
奥付を見ると2006年6月10日14版となっています。
写真集が14版というのもすごいけど。

ピックアップされている30カ国です。
マリ
南アフリカ
エチオピア
クウェート
イラク
イスラエル
スペイン
イタリア
ボスニア
アルバニア
ロシア
ドイツ
アイスランド
イギリス
アメリカ合衆国
アルゼンチン
ブラジル
ハイチ
キューバ
グアテマラ
メキシコ
西サモア
ベトナム
タイ
インド
ブータン
ウズベキスタン
モンゴル
中国
日本

この中で注目するのは撮影は1993年~94年なので、このときの世界情勢からするとクウェートは湾岸戦争の後、イラク、イスラエルも同様。
南アフリカはソウェトの家族、まだアパルトヘイトであった時代。
ボスニアに内戦の真っ只中、写真にも兵士が護衛で写っていたり、住居であるアパートに砲撃の後などすさまじい。
ロシアはこの写真の撮影後に家長が殺されている。
イタリアやスペインの閉鎖社会の部分を見せている。
アルバニアは鎖国していて家族の家財もロバが1頭など、ウズベキスタンやモンゴルはソ連崩壊後独立してからの状況。
ブータンは鎖国の時代。
タイ、インド、ベトナムや高度成長になる前の生活。
日本はバブルがはじけていた時代。東京郊外在住のウキタ(浮田)さんという家族。
家財とか見ていると日本の普通の家庭ですね。

そんな社会を映す写真集。
写真が良いのはもちろんスナップ、子供、各国の取材した家のトイレなど、私が好きな被写体ばかりです。
15年経っても色褪せていません。
この労作が1,987円で買えます。

もし、今、同じ企画をしたら30カ国、どの国をピックアップしましょうか?
えーと・・・

ノンフィクション2冊2009年07月20日 18時23分30秒

ノンフィクション2冊
最初は「伊号潜水艦訪欧記」-ヨーロッパへの苦難の航海-
第二次世界大戦中に日本から同盟国ドイツに派遣された伊号潜水艦の記録です。
なぜ、この本を買ったのかというと、高槻駅前の本屋で「旅の本」という文庫の特集コーナーを設けていました。蔵前仁一や下川裕治から深夜特急などおなじみの旅本が積んでありました、ただそのコーナーの左のほうを見ると店員さんが好みで選んだのかマイナーな本が積んでありました。
その中に一冊がこの本です。
店員さんのセンスにちょっと感心しました。
出版社は光人社、編集は伊呂波会。
光人社は第二次世界大戦の戦記を出している出版社で、いままでこの手の本は買ったことはありませんでした。
伊呂波会とは対戦中の日本海軍潜水艦の搭乗員の校友会です。

大戦中の同盟国ドイツとの物資や技術のやりとりなど商船などは連合国に拿捕されたり撃沈されたりして、唯一残された手段は潜水艦だけでした。

伊号というのは日本で最大排水量を誇る潜水艦でした。
日本から大戦中5回伊号がドイツに派遣されましたが往復成功したのは唯一伊8号のみでした。それ以外は往復のどちらかで攻撃や事故で撃沈されてしまいました。
護衛の戦艦も戦闘機もなく単独行であり連合軍に見つかると、それは死に直結でした。第1部はその派遣の記録です。

第2部では、伊8号でドイツに渡った技術者の方の航海記とドイツ滞在記で、最後は敗戦直前のドイツからフィンランドへの脱出までの記録です。
航海は日本からシンガポール、そしてインド洋からアフリカ南端の喜望峰を回りドイツまで向かうという、旅というよりあまりにも過酷な航海でした。
航海記は日記スタイルで詳細な記述が書いてあるのですが文体のせいか敵の攻撃を受けたときの記述も淡々と書かれています。一方、ドイツ滞在記は大戦末期のベルリン事情が人間臭く詳しく書かれています。
読んでいくうちにこの時代に生きた人たちの死生観というのは、今の私たちよりはるかに「死」が近かったことがわかります。日記の中で昨日まで同じ部隊にいて別の潜水艦に乗った戦友の死とか、淡々と記されています。
航海記は日記スタイルで詳細な記述がの滞在記

第二次世界大戦のドイツへの潜水艦航海記として秀逸だと思いますが、「旅」の本として読むにはちょっと辛いかな。
でも歴史を知る上には良い本です。


次は「下山事件(シモヤマ・ケース)」(森達也著 新潮文庫)
下山事件とは1949年戦後の混乱がまだ続いていた時代、初代国鉄総裁の下山定則が常磐線五反野駅で礫死体として発見された事件である。この後、三鷹事件、松川事件と国鉄をめぐる謎の事件が続くこととなる。
下山事件は過去に松本清張の小説は当時取材した記者によって書かれ、他殺説、自殺説、共産党員犯人説、GHQ犯人説などなど、いまだ多くの謎につつまれています。

著者の森氏は、1990年代終わりに松川事件の関係者の子孫と知り合い下山事件の謎に引き込まれていきます。
事件発生から50年経ち関係者の多くが鬼籍に入り、過去の記録の見直しや生存者へのインタビューと続いていきます。

取材過程は面白いのですが滝氏が映像ディレクターということもあり、テレビ的な話の展開になっていき、先に出た話が途中で再録されていたり、章の途中でいきなり過去の話から今の話になるので展開についていけなくなってしまうので読んでいるほうが戸惑ってしまいます。

その滝氏もこの事件のTV番組で特番予定が中止になり、その後の週刊誌連載など途中で共同取材した記者が書いてしまうなど、最初の情報提供者がじれて自身で「下山事件」を書いてしまうという、滝氏の意図していないことが起こります。森氏の生き方考え方はわかるのですが、事件への取材が途切れたり、話がそれたりしてしまいます。

戦後の混乱期の事件の描写とか結論を導いていく過程は上手いのですが、一冊のノンフィクションとしては散漫になったきらいがあります。
面白い素材だけにちょっと残念です。

たまたまですが1940年代の日本で起こったノンフィクション2冊。
知っているようで知らない日本の歴史です。